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1. はじめに

特許出願時保護を受けようとする事項はクレームに記載しなければならず、クレーム作成の実務は各国ごとに少しずつ異なる。その一例として、日本ではマルチマルチクレームを許容しているが、韓国では許容していない。
韓国では、引用関係が複雑であれば審査が難しくなるとの理由で禁止している。

したがって、マルチマルチクレームが認められる日本出願を基礎として韓国出願をする際には韓国特許法下のクレーム記載方法に留意する必要があるところ、以下ではマルチマルチクレームについて詳細に説明したい。

2. マルチクレームはマルチクレームを引用不可(韓国特許法施行令第5条第6項)

(1)意義
二以上の項を引用する請求項は、二以上の項を引用した他の請求項を引用することができない。この規定の趣旨は、一の請求項を解釈するにあたり、多数の他の請求項を参照しなければならない困難を防止することにある。

(2)許容例
【請求項1】......装置。
【請求項2】......請求項1に記載の装置。
【請求項3】......請求項2に記載の装置。
【請求項4】......請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】......請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
請求項4及び5は二以上の項を引用しているが、請求項4及び5が引用する請求項は引用項がないか、又は一の請求項のみ引用しているので、請求項4及び5はクレーム記載方法に違反しない。

(3)違反例
①二以上の項を引用する請求項が二以上の項を引用した他の請求項を引用した場合、クレーム記載方法に違反する。

【請求項1】......装置。
【請求項2】......請求項1に記載の装置。
【請求項3】......請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】......請求項2又は3に記載の装置。
請求項4は二以上の項を引用する従属項であり、請求項4は二以上の項を引用した他の請求項(請求項3)を引用しているので、請求項4はクレーム記載方法に違反する。

②i)二以上の項を引用した請求項において、ii)その請求項の引用された項がさらに一の項を引用した後に、iii)その一の項が結果的に二以上の項を引用した場合も、クレーム記載方法に違反する。
【請求項1】......装置。
【請求項2】......請求項1に記載の装置。
【請求項3】......請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】......請求項3に記載の装置。
【請求項5】......請求項2又は4に記載の装置。
【請求項6】......請求項5に記載の装置。
請求項5は二以上の項を引用する従属項であり、請求項5は二以上の項を引用した請求項3を引用した請求項4を引用しているので、クレーム記載方法に違反する。すなわち、請求項4が請求項3のみ引用しているとしても、請求項3が二以上の請求項を引用しているため、実質的に二以上の項を引用する場合と同様であるから、請求項5はクレーム記載方法に違反する。

(4)注意すべき点
一方、韓国特許法施行令第5条第6項は「二以上の項を引用する請求項」を対象としているため、一の請求項のみ引用する請求項に対しては適用できないということに注意しなければならない。上記項目「(3)違反例」に関連して、請求項6は韓国特許法施行令第5条第6項に違反する請求項5を引用しているため、実質的に多数の他の請求項を参照して解釈しなければならない困難はあるが、二以上の項を引用する請求項ではないから、請求項6は韓国特許法施行令第5条第6項違反とはならない。

(5)違反の効果
韓国特許法施行令第5条第6項違反は、形式的な要件としての実体把握及び権利範囲の確定とは関係のない事項であるから、拒絶理由にのみ該当し、情報提供事由、特許取消申請事由及び特許無効事由には該当しない。
また、救済方法として、特許決定前は補正を通じて、特許登録後は特許の訂正又は訂正審判を通じて治癒することができる。



3. PCT出願での関連問題
PCT規則では、マルチクレームがマルチクレームに従属してはならないと規定している(PCT規則6.4(a))。
しかし、これに関連して、韓国特許庁でも日本特許庁と同様に、韓国特許庁を受理官庁としてPCT出願するときは、マルチクレームがマルチクレームに従属しても一切指摘されることなく受理される。韓国特許庁での受理後、韓国国内段階の実体審査の結果、拒絶理由として指摘される。
一方、韓国特許庁は、PCT規則6.4(a)に規定する従属項記載方法(マルチクレーム又は択一的記載)違反の場合、従属項について国際調査を実施しないこともある。

具体的には、従属項について国際調査を実施しない場合、国際調査報告書の第2ページ中の「C. 関連すると認められる文献」の「関連する請求項の番号」と見解書の新規性等についての見解(第V欄)は提示しない。しかし、見解書の作成時に第VII欄に従属項記載方法違反事項についてできるだけ明示するよう勧告している。

反面、国際調査を実施してはならないという禁止規定があるわけではなく、国際調査を実施するからといって出願人や第三者等に不利益があるとはみることができない。したがって、過度の審査負担なく国際調査が可能な場合は、審査官の裁量により調査を実施することもある。審査官が従属項記載方法違反の場合にもかかわらず従属項について国際調査をしようとする場合は、第II欄(請求の範囲の一部の調査できないときの意見)の3. □にチェックせずに国際調査報告書の第2ページ中の「C. 関連すると認められる文献」の「関連する請求項の番号」に該当従属項を記載する。また、見解書には、新規性等についての見解(第V欄)及び従属項記載方法違反(第VII欄)を記載する。

4. 弊所の標準的な業務プロセス
弊所では、出願時の請求の範囲にマルチマルチクレームが含まれていても、顧客より特に指示がない限り、そのまま出願をする。
その後、一般的に、審査請求の際に、マルチマルチクレームの存在に関する通知を行うと共にこれに対する弊所の補正案を提示する。
顧客が弊所の補正案にしたがい補正を希望する場合、審査請求時に補正書と共に提出し、特別に指示がない場合又は補正を希望しない場合は、補正を行うことなく審査請求を行う。

参考までに、審査請求時に補正を行わなかったとしても、オフィスアクションが発行される前であればいつでも自発補正が可能であり、オフィスアクションが発行された後は応答期間内に補正を行うことができる機会がある。

5. むすび
弊所は長年の経験を元に顧客の利益を守るため、マルチマルチクレームの存在を適切な時期に顧客に通知し、これに対する解決策を提示し、最終的に顧客の指示に従っている。

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