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出願商標「韓国金取引所」は識別力のない標章に該当するとした特許法院判決(2022ホ5676) 


弁理士 鄭 錫鳥  


1. 事件の概要
(1)本件出願商標「韓国金取引所」(出願番号: 40-2020-189561、出願日: 2020年10月26日)は商標法第33条第1項第3号(性質表示)、第4号(顕著な地理的名称)及び第7号(需要者が誰の業務に係る商品を表示するものであるかを識別することができない標章)に該当し登録を受けることができないとの理由で、特許庁は拒絶決定(2021年2月25日)。
(2)原告は、特許庁の拒絶決定に対して特許審判院に拒絶決定不服審判を請求(2021年3月26日)し、商標法第33条第2項(使用による識別力の獲得)に該当すると主張。
(3)本件出願商標は商標法第33条第1項第3号、第4号及び第7号に該当し、商標法第33条第2項に該当しないと当該審判請求を棄却(2022年9月23日)。
(4)原告は、特許審判院の審決を不服とし、特許法院に審決取消訴訟を提起。

2. 特許法院判決(2023年7月6日)
(1)商標法第33条第1項第4号(顕著な地理的名称)及び第33条第1項第7号(需要者が誰の業務に係る商品を表示するものであるかを識別することができない商標)に該当するかどうか
本件出願商標は、顕著な地理的名称である「韓国」と、指定商品である「金」と、特定の商品を大量に取引する常設市場を意味する「取引所」とが結合されたもので、「韓国にある金を取引する場所」程度の意味に認識されるので、本来の顕著な地理的名称や記述的意味を離れて新たな観念を生むとか新たな識別力を形成するとはいえず、商標法第33条第1項第4号に該当し、指定商品との関係において識別力が認められないから、商標法第33条第1項第7号の識別力のない標章にも該当する。
(2)商標法第33条第2項(使用による識別力の獲得)に該当するかどうか
原告は2011年頃から指定商品に本件出願商標もともに付した標章を使用しており、指定商品がたゆまぬ広報、マーケティング活動を通じて市場取引者に多数紹介されており、その売上規模も相当な程度に達したものとみられるものの、原告が独占的かつ継続的に本件出願商標を使用することによって本件出願商標が一般需要者に指定商品の出所を表記するものと認識される水準に至り使用による識別力を取得したとは認めがたい。
その理由は次のとおり。
① 本件出願商標は指定商品の出所として単独で使用された場合はほとんどなく、多くの場合「韓国金取引所+文字」又は「韓国金取引所+図形」で使用されている。
② 本件出願商標は複数の競業者によりその構成部分を含む商標として競合的に使用されているから、原告が本件出願商標を独占的に使用したとはみがたい。
本件審決日頃、韓国金H取引所、韓国金I取引所、韓国金J取引所、韓国K取引所、韓国L金取引所のように、「韓国、金、取引所」という文字がすべて含まれた商標41件が登録、27件が出願されており、ポータルサイトNAVER検索でも、原告が使用しているもの以外に、「韓国L金取引所」、「T金取引所」、「U金取引所」、「韓国V金取引所」等、原告のように金製品 をオンライン上で販売している複数の業者を確認することができる。
③ 原告は2021年3月30日から同年4月12日まで、ソウル特別市・京畿道・四大広域市(釜山、大邱、光州、大田)の居住者で、ゴールドバーの購入経験があるかゴールドバー・金の投資に関心があって調べたことがある30~69歳の男女500人を対象に、本件出願商標認識に関するアンケート調査を行った結果、アンケートに答えた回答者のうち68%が本件出願商標を原告の商標と認識しているとの回答結果を提示した。
特許庁の商標審査基準では、「消費者認知度調査は、同種商品の実際の又は潜在的需要者を対象として代表性(地域、性別、年齢等)を示さなければならず、アンケートに答えたサンプル数が1000人以上であり、質問の形態が公正かつ適切に構成されている場合、信頼度が高いとみることができる。反面、回答したサンプル数が500人以下のアンケート調査の場合、信頼度が低いとみることができる。」と規定している。ところが、本件アンケート調査では、回答したサンプル数が500人に過ぎない。
(3)結論
本件出願商標は、商標法第33条第1項第4号、第7号に該当し、商標登録を受けることができず、例外として商標登録を受けることができる商標法第33条第2項にも該当しない。

3. むすび
2014年6月11日付改正商標法において、使用による識別力の獲得の要件を、「商標登録出願前からその商標を使用した結果、需要者の間に特定人の商品に関する出所を表示するものと識別できるようになった場合は、その商標を使用した商品に限定して商標登録を受けることができる。」と変更して、「顕著に認識されている」から「特定人の商品に関する出所を表示するものと識別できるようになった」と要件が緩和されたが、本件出願商標に関する法院判決から、識別力を欠き登録を受けることができない出願商標が商標法第33条第2項に定める使用による識別力の獲得によって登録を受けるのは依然難しいことが分かる。
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