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方法発明の特許権が消尽理論により制限され得るとした韓国大法院判例

物発明の特許権に消尽が適用されるのと同様に、方法発明の特許権にも一定条件下で消尽が適用され特許権の効力が制限され得ることを明確にした判例(大法院2019年1月31日宣告2017ダ289903判決、以下「対象判決」)を紹介したい。

1. 事実関係
A(原告)は、「摩擦撹拌溶接(Friction Stir Welding)方法」という方法発明(以下「本件特許発明」)の特許権者である。本件特許発明は、接合する部材の結合線上でプローブ(probe)に強い圧力を加えつつプローブを回転・移動させることにより、それにより生じる摩擦熱によって部材を可塑化させた後、これを硬化させて部材を接合することに特徴がある。

A(原告)は、Bに対し、本件特許発明の実施に適した装備(摩擦撹拌溶接機)を製造・販売してもよいとの実施許諾をし、その後、C(被告)は、Bから、Bが製造した摩擦撹拌溶接機を購入して使用した。よって、A(原告)は、C(被告)を相手取り特許権侵害に基づく損害賠償を請求した。

2. 対象判決の要旨
韓国大法院は、方法発明の特許権に消尽が認められる要件を次のように提示した: 「『物を生産する方法の発明』を含む『方法発明』(以下「方法発明」)の特許権者等が韓国においてその特許方法の使用に使われる物を適法に譲渡した場合であって、その物が方法発明を実質的に具現した物であれば、方法発明の特許権は既に目的を達成して消尽したから、譲受人等がその物を利用して方法発明を実施する行為について特許権の効力が及ばない。」

続いて、上記「実質的具現有無」の判断基準を次のように提示した: 「ある物が方法発明を実質的に具現した物かどうかは、社会通念上認められるその物の本来の用途が方法発明の実施だけであり他の用途はないかどうか、その物に方法発明特有の解決手段に基づく技術思想の核心に当たる構成要素が全て含まれているかどうか、その物を通じて行われる工程が方法発明の全体工程に占める割合等、上記の各要素を総合的に考慮して、事案に従い具体的・個別的に判断しなければならない。社会通念上認められる物の本来の用途が方法発明の実施だけであり他の用途はないというためには、その物に社会通念上通用され承認され得る経済的、商業的又は実用的な他の用途があってはならない。これとは異なり、特許方法以外の方法に理論的、実験的又は一時的に使用される可能性がある程度に過ぎない場合には、その用途は、社会通念上認められるその物の本来の用途とみがたい。」

最後に、韓国大法院は、上述のような要件及び基準を本件に適用し、「A(原告)が使用した溶接機は本件特許発明の実施にのみ使用される専用品であり、その技術思想の核心に当たる構成要素を全て含んでいるから、本件特許発明を実質的に具現した物であり、BがC(被告)に摩擦撹拌溶接機を販売したことは特許権者であるA(原告)の許諾の下で行われた適法な譲渡に該当するところ、A(原告)の方法特許は消尽し、C(被告)の溶接機の使用行為は侵害を構成しない」と判示した。

3. 対象判決の意義
物発明の特許権において、その特許発明を具現した物が適法に流通された場合、その特許権は既に目的を達成して消尽したゆえ、譲受人や転得者に特許権の効力が及ばないという点には理論上や実務上で異見がなかった。しかし、方法発明の特許権にも消尽が適用され得るのか、適用され得るならどのような場合に適用されるのかについては異見が存在しており、下級審判決間でも不一致があった。

対象判決は、方法発明を実質的に具現した物が適法に流通された場合には、その物の使用行為について方法発明の特許権が消尽しその特許権の効力範囲が制限され得ることを宣言した韓国で最初の判例であることに意義がある。







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