1. 制度の趣旨
医薬品及び農薬の場合、特許発明を実施するためには関連機関の許可や登録(以下「許可等」)を受ける必要があり、許可等を受けるためには有効性及び安全性試験等関連手続きを行う必要がある。ところで、このような必要な関連手続きを行うには相当な期間を要し、特許権者はその期間分特許発明を実施することができなくなり、かかる問題を解決するために「一定の条件を満たす医薬品及び農薬について5年の範囲内でその特許権の存続期間を延長する制度」を設けている。
2. 特許権存続期間の延長登録出願時の留意事項
- 特許権者自身が許可等を受けたことや、延長登録の決定まで専用実施権者又は登録された通常実施権者が許可等を受けたことを確認できなければならない。
- 延長登録の出願人は特許権者でなければならず、特許権が共有である場合には共有者全員が共同で出願しなければならない。
- 薬事法及び農薬管理法に基づき、最初の許可等を受けた有効成分が特許請求の範囲に記載されていなければならない。
- 延長登録出願の対象となる特許は物質、製法、用途及び組成物特許であり、中間体、触媒及び製造装置に係る特許は除外される。
- 延長の対象となる出願の特許権は特許庁に係属中でなければならない。すなわち、当該特許権が無効・取り消された場合や、特許料未納により消滅した場合には延長登録出願をすることができない。
- 医薬品の場合、臨床試験承認(申請)関連資料、臨床試験終了報告書、許可機関における許可書類検討期間を立証することができる資料の各写しを提出しなければならない。
- 農薬(原剤)の場合、試験(申請)関連資料、試験期間、登録機関における登録書類検討期間を立証することができる資料の各写しを提出しなければならない。
3. 特許権存続期間の延長期間の申請
- 医薬品の場合、食品医薬品安全処長の承認を得て実施した臨床試験期間と食品医薬品安全処において要した許可申請関連書類検討期間とを合算した期間を延長申請することができる。
- 動物用医薬品の場合、農林畜産検疫本部長の承認を得て実施した臨床試験期間と農林畜産検疫本部において要した許可申請関連書類検討期間とを合算した期間を延長申請することができる。
- 農薬又は農薬原剤の場合、農薬管理法施行令が定める試験研究機関において実施した薬効や薬害等の試験期間と農村振興庁において要した登録申請関連書類検討期間とを合算した期間を延長申請することができる。
例外として、特許権者の責めに帰すべき事由により要した期間は除外される。
4. 効用性
本来、特許権の保護期間(存続期間)は特許権が登録された日から出願後20年になる日までであるが、医薬品や農薬又は農薬原剤の場合には、許可や登録のために必要な有効性及び安全性試験で保護期間が実質的に短縮されてしまうことがある。したがって、本制度により、許可や登録に要した期間分最大5年の範囲内で特許権の存続期間を延長することによって、医薬品の発明や農薬又は農薬原剤の発明のより充実した保護を図ることができる。
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