特許権の故意侵害に対する損害賠償額の増額に関する判例
1.判決の概要
2024年10月31日に宣告された特許法院2023ナ11276判決は、故意的な特許侵害に対して、特許法第128条第8項により2倍の増額賠償(懲罰的損害賠償)を認定した判例である。
2.主要争点及び判決要旨
1)附則第3条の解釈
侵害行為が法施行日(2019年7月9日)前に開始されたとしても、施行日以降も侵害が継続されていれば、その部分については増額賠償が可能であると判示した。
2)故意性の判断
法院は、被告が特許権者の特許の存在を認識していたにもかかわらず次のような状況により侵害行為を継続した点を総合して、故意性を認定した。
(1)被告は、侵害行為前に原告との取引関係を通じて当該特許の存在を知っていた。
(2)被告は、原告から特許侵害中断の要請を受けたにもかかわらずそれに応じることなく侵害を持続した。
(3)被告の提起した特許無効審判及び権利範囲確認審判が棄却された後も、侵害行為を中断しなかった。
(4)被告は侵害についての法律的検討を行うことなく製品を継続して生産・販売したという点で確定的あるいは未必の故意があったと判断した。
このような一連の状況は、単なる過失を超えた意図的行為として評価され、被告の提出した弁理士意見書も、故意性を否定する根拠として受け入れられなかった。
3)損害額の算定
故意侵害期間損害額約8,793万ウォンに対して2倍(1億7,585万ウォン)の増額が適用され、全体の損害賠償額は約8億5,066万ウォンと算定された。
3.増額賠償の判断基準
法院は、被告が取引関係の側面及び経済的側面において原告に対して優越的地位にあった点(第1号)、被告が「確定的な故意」をもって侵害行為をした点(第2号)、被告が得た経済的利益が少なくなかった点(第4号)、本件侵害行為が長期間にわたりなされその回数も多い点(第5号)、被告の財産状態(第7号)、及び被告が被害救済のために十分な努力をしなかった点(第8号)等を理由に、増額賠償の程度を2倍に定めた。
4.実務的示唆点
1)権利者側
損害賠償額の増額を最大化するためには、侵害事実を認識した後直ちに警告書の送付や交渉進行記録の確保等、故意性を立証する資料を蓄積する必要がある。
2)侵害者側
侵害の疑いがある場合には、直ちに法律諮問を受け、回避設計や実施権交渉等の積極的な対応が求められる。単に無効意見書に依存するのは、故意性を否定する根拠とはなりにくい。
5.結論
2023ナ11276判決は、故意的特許侵害に対する実効的制裁手段としての増額賠償制度の適用範囲を広げ、実務上の故意の判断及び損害算定に関する具体的な基準を提示した判例である。特許法改正で最大5倍までの賠償が可能となっただけに、今後、類似事例において本判決の影響力はさらに拡大していくと予想される。
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