韓国における審査及び審判実務の変動事項(2025年)
1. 分割出願の審査順序
2025年1月1日付で改正された韓国特許庁発行の特許審査事務取扱規程により、分割出願の審査順序が、従来の原出願の審査請求順から、分割出願の審査請求順に変更された。
韓国特許法上、分割出願の審査請求期限日は「原出願日から3年又は分割出願日から30日のうち遅い日」であるため、多くの場合、分割出願はその出願日から30日以内に審査請求をするようになる。また、従来の分割出願は、原出願の審査請求日順通りに審査を受けるようになっていたため、結局、分割出願日から2~8か月程度で審査結果を受け取っていたのが通常であった。これは、現時点において審査請求日から約2年が経過した後審査結果を受け取る一般出願に比べ相当早く審査結果を受け取るようにする結果を生んだ。
また、韓国では、原出願に対し拒絶決定不服審判を請求する際、実務的に審判の棄却に備えた分割出願(以下「予備的分割出願」という)をしておき、審判請求が棄却される場合、予備的分割出願のクレームを補正し出願発明を権利化するケースがよくある。この予備的分割出願の場合、従来は、原出願の審決が出る前に分割出願に対して審査結果が発行され、その結果、原出願の審決が出るまでかなりの期間、期間延長をせざるを得なかった。しかし現在では、予備的分割出願も審査結果を遅く受け取るようになるため、結果的に期間延長の負担が軽減され、出願人にとって費用的にかなりの利得となりうるものと考えられる。
2. 当事者系審判事件において特許審判-調停連携制度の活性化推進
韓国特許審判院は、2025年1月から無効審判のような当事者系審判事件において特許審判-調停連携制度を活性化させると発表した。特許審判-調停連携制度とは、審判長が審判手続きよりも調停による解決が必要と判断した審判事件について、当事者双方の同意を得て産業財産権紛争調停委員会の調停手続きに回付する制度である。無効審判、権利範囲確認審判等の当事者系審判事件の進行中、当事者双方の合意があればいつでも、審判-調停連携の申請が可能である。調停申請があると当該審判事件の手続きは中止され、調停が成立すれば裁判上の和解と同様の効力が発生し、調停が不成立となれば当該審判事件の手続きが再開される。審判と連携した調停には別の事件番号が付与され、審判事件の状況を把握している審判官が直接調停委員として参加するため、迅速な調停進行が可能となる。韓国特許審判院は同制度の活性化のために、当事者系審判手続きにおいて同制度を積極的に案内し、調停委員として参加する審判官プールを構成して、審判-調停連携事件の迅速な進行を支援する計画である。
3. 審判官の登録決定
韓国特許審判院は、2025年1月から特許又はデザインの拒絶決定不服審判において登録決定が妥当であり、さらなる争点がないと判断する場合、審判官が審決をもって登録決定をすると発表した。これにより、登録の遅延を防ぐために、審査段階において未検討の争点が残っていたり、新たな拒絶理由が発見される等、さらなる審査が必要な場合にのみ、審査局に差し戻すようにし、それ以外に拒絶決定不服審判を認容する場合、審判官が審決をもって直接登録決定をするようにして、出願人が特許又はデザインについて1~2か月早く登録を受けることができる効果が期待される。
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