特許を受けることができる権利を移転した譲渡人が特許出願をして登録された特許に無効事由があるかどうか(大法院2020年5月14日宣告2020フ10087判決)
1. 事案の概要と争点
被告は2012年11月13日、被告補助参加人に「分離搭載型の発電機セット」を製作して供給することに契約し(以下「本件第1の契約」という)、株式会社WOOCHANGエンジニアリング(以下「WOOCHANGエンジニアリング」という)は2012年12月5日、被告に上記発電機セットのうち「電源分配装置の構成品」を開発して供給することに契約した(以下「本件第2の契約」という)。本件第1の契約と本件第2の契約によれば、契約により発生した全知的財産権(登録可能な権利を含む)は、被告を経て被告補助参加人に帰属するようになっている。本件第2の契約の履行過程において発生した本件特許発明に係る特許を受けることができる権利は、発明の完成と同時に発明をした者(WOOCHANGエンジニアリングの社員)に原始的に帰属した後、使用者であるWOOCHANGエンジニアリングを経て本件第1の契約と本件第2の契約に従い最終的に被告補助参加人に承継された。ところが、WOOCHANGエンジニアリングは、2015年5月28日に本件特許発明を出願し、2016年12月16日に特許登録を受け、2017年8月30日に原告にその特許権を移転した。
本事案の争点は、1) 本件特許発明の特許が無権利者の出願により登録された特許として無効であるかどうか、2) 原告が特許法第38条第1項の「第三者」に該当するかどうかである。
2. 大法院法理
1) 発明をした者又はその承継人は、特許法で定めるところにより特許を受けることができる権利を有する(特許法第33条第1項本文)。もし、そうした正当な権利者でない者(以下「無権利者」という)がした特許出願について特許権の設定登録がなされれば、特許無効事由に該当する(特許法第133条第1項第2号)。特許出願前に特許を受けることができる権利を契約に従い移転した譲渡人は、これ以上その権利の帰属主体ではないので、その譲渡人がした特許出願について設定登録がなされた特許権は、特許無効事由に該当する無権利者の特許である。
2) 特許出願前になされた特許を受けることができる権利の承継は、その承継人が特許出願をしてはじめて第三者に対抗することができる(特許法第38条第1項)。ここで、第三者は、特許を受けることができる権利について承継人の地位と両立し得ない法律上の地位を取得した者に限る。無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人は、特許法第38条第1項でいう第三者に該当しない。
3. 大法院判決の要旨
大法院は、特許出願前に特許を受けることができる権利を契約に従い移転した譲渡人(WOOCHANGエンジニアリング)は、これ以上その権利の帰属主体ではないので、その譲渡人(WOOCHANGエンジニアリング)がした特許出願について設定登録がなされた特許権は、特許無効事由に該当する無権利者の特許であり、特許法第38条第1項でいう第三者とは、特許を受けることができる権利について承継人の地位と両立し得ない法律上の地位を取得した者に限るので、無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた原告は、特許法第38条第1項でいう第三者に該当しないと判示した。
4. 対象判決の意義
対象判決は特許法第38条第1項の「第三者」の意味に関連して、無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人は特許法第38条第1項でいう第三者に該当しないと説示し、具体的な事案を通じて特許法第38条第1項の「第三者」の意味を明らかにしたという点に意義がある。
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