存続期間が延長可能な発明に該当するかどうかが問題となった事件(大法院2024年7月25日宣告2021フ11070)
1.序論
特許法第89条第1項は、特許発明の実施のために他の法令により許可等を受けるために必要な有効性・安全性等の試験により長期間を要する発明については、特許権の存続期間を延長することができると規定している。このような特許権存続期間延長登録の対象となる発明に関連し、特許法施行令第7条第1号は、特許発明を実施するために薬事法又は麻薬類管理に関する法律により品目許可を受けた医薬品のうち、新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質をいう)を有効成分として製造した医薬品であって、最初に品目許可を受けた医薬品に限定すると規定している。
2.事件の概要
本件請求項は、ペグインターフェロンベータ-1a(インターフェロンベータ-1aにポリエチレングリコール部分が結合した形態)を有効成分とする医薬品発明で、原告は本件請求項に関する存続期間延長登録出願をしたが、特許庁審査官は、インターフェロンベータ-1aを有効成分とする既許可医薬品があり、本件医薬品は、治療効果を示す活性部分がインターフェロンベータ-1aで、既許可医薬品と同一なので新物質に該当しないとの理由で拒絶決定をし、特許審判院も同様の趣旨で原告の拒絶決定不服審判請求を棄却し、よって原告は特許法院に審決取消訴訟を提起した。
特許法院では、「本件医薬品において薬効を示す活性部分はペグインターフェロンベータ-1aであり、これは、活性部分をインターフェロンベータ-1aとする既許可医薬品を考慮しても、薬効を示す活性部分の化学構造が新しい新物質に該当するから、特許法施行令第7条第1号に定める新物質を有効成分として製造した医薬品に該当する」とみて、これとは異なる判断をした特許審判院審決を取り消した。これに対し、被告特許庁が大法院に上告を提起した。
3.対象判決の要旨
大法院では、許可等による特許権の存続期間の延長制度を規定した特許法第89条第1項と当該特許法施行令条項の全般的な体系と趣旨・目的、当該施行令条項の規定形式と内容、関連薬事法令等を総合すると、本件施行令条項における「薬効を示す活性部分」は、「医薬品の有効成分のうち、活性を有しつつ内在する薬理作用により医薬品品目許可上の効能・効果を示す部分」を意味し、それ自体では活性を有さない部分が、既存に品目許可を受けた医薬品の「薬効を示す活性部分」に結合して医薬品の効能・効果の程度に影響を与えるとしても、これは、医薬品の効能・効果としての「薬効」を示す部分ではないから、かかる部分が「薬効を示す活性部分」に結合しているという事情だけで、その結合物全体を本件施行令条項でいう「薬効を示す活性部分」とみることはできないと解釈したうえで、本件医薬品の有効成分のうち、体内活性を有しつつ内在する薬理作用により再発性多発性硬化症の治療効果を示す部分はインターフェロンベータ-1aであり、インターフェロンベータ-1aに結合したポリエチレングリコール部分は、体内活性や上記のような治療効果を有さず、インターフェロンベータ-1a部分が血液中に長く滞留するようにしたり、インターフェロンベータ-1aのタンパク質受容体への結合力を低下させたりするなどして、インターフェロンベータ-1aの活性の程度に影響を与える部分に過ぎないから、本件医薬品の有効成分のうち、「薬効を示す活性部分」は、インターフェロンベータ-1aであり、ポリエチレングリコール部分が、「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1aに結合してペグインターフェロンベータ-1aを構成しているとしても、その結合物全体であるペグインターフェロンベータ-1aを本件施行令条項でいう「薬効を示す活性部分」とみることはできず、本件医薬品における「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1a部分は、既許可医薬品における「薬効を示す活性部分」であるインターフェロンベータ-1aと立体的化学構造が同一であるとみて、これとは異なる判断をした特許法院判決を破棄・差し戻した。
4.結論
このような大法院判決は、許可等による存続期間延長対象発明を規定した特許法施行令第7条第1号の「新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質)」の意味をより明確にしたという点で意義がある。
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