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均等侵害の構成変更容易性を判断する際に出願後の公知資料を参酌するか否か(大法院2023年2月2日宣告2022フ10210判決)

1. 事件の概要
実施しようとする発明(確認対象発明)が、有効な特許権の権利範囲に含まれるか確認する消極的権利範囲確認審判において、均等侵害の成否と構成変更容易性判断の基準時が争点となった事案である。

2. 本件事実関係の整理
特許発明の化合物は「ダパグリフロジン」であり、確認対象発明の化合物は「ダパグリフロジンフォーメート」で、特許発明の化合物であるダパグリフロジンは、その分子内に存在するβ-D-グルコース部分の6番の炭素原子にヒドロキシ基が結合している反面、確認対象発明のダパグリフロジンフォーメートは、ダパグリフロジンの分子内に存在するβ-D-グルコース部分の6番の炭素原子に結合したヒドロキシ基の位置にギ酸を結合させ、そのエステル形態であるフォーメートエステルを形成した構造である。両化合物は、β-D-グルコース部分の6番の炭素原子に結合した置換基の形態を除いては化学構造が同一である。

3. 大法院判決の要旨
(1)文言侵害及び均等侵害の判断方法
特許発明と対比される確認対象発明が特許発明の権利範囲に属するというためには、特許発明の請求の範囲に記載された各構成要素とその構成要素間の有機的結合関係が確認対象発明にそのまま含まれていなければならない。確認対象発明に、特許発明の請求の範囲に記載された構成のうち変更部分がある場合にも、i)特許発明と課題解決原理が同一であり、ii)特許発明と実質的に同じ作用効果を奏し、iii)そのように変更することが、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「通常の技術者」という)であれば何人も容易に想到し得る程度であれば、特別な事情がない限り、確認対象発明は、特許発明の請求の範囲に記載された構成と均等なもので、依然として特許発明の保護範囲に属するとみなければならない(大法院2014年7月24日宣告2012フ1132判決、大法院2019年1月31日宣告2017フ424判決等参照)。

(2)ダパグリフロジンをダパグリフロジンフォーメート形態に変更することが容易か否か
基本活性化合物のヒドロキシ基を対象に選び、化学的変形を通じてエステル形態のプロドラッグを作ることは、よく知られているプロドラッグ設計方式であり、確認対象発明においてフォーメートエステル構造が導入された位置であるグルコースの6番の炭素原子に結合したヒドロキシ基(一次アルコール)は、2乃至4番の炭素原子に結合したヒドロキシ基(二次アルコール)よりも立体障害が少ないため、プロモイエティ(promoiety)結合を通じた化学的変形が容易になされ、エステラーゼ酵素の作用を受けて加水分解されることにより、基本活性化合物であるダパグリフロジンに再度転換されるのにも良い位置であるため、通常の技術者がこの位置をエステル化の位置に選定してプロドラッグ化することを容易に想到し得るものと思われる。
また、基本活性化合物の変形可能な作用基がヒドロキシ基である場合、カルボン酸をプロモイエティとして使用することも、よく知られているプロドラッグ設計方式であるが、確認対象発明においてプロモイエティとして使用したギ酸は、カルボン酸の中でも最も簡単な化学構造を有し、体内安定性もある程度証明されているため、通常の技術者がヒドロキシ基を作用基として有する基本活性化合物であるダパグリフロジンをプロドラッグとして開発するに当たって、プロモイエティとしてギ酸を選択することにも困難がないものと思われる。
こうした点を考慮すると、本件審決時を基準に、通常の技術者であれば何人も、本件第1項発明の「ダパグリフロジン」を医薬品として開発する過程において、確認対象発明の「ダパグリフロジンフォーメート」を主成分の探索対象に容易に含めてその物理化学的性質等を確認するものと思われるから、通常の技術者が本件第1項発明のダパグリフロジンを確認対象発明のダパグリフロジンフォーメートに変更することは、公知技術から容易に想到し得る程度とみることができる。

4. 判決の意義
本判決は、均等侵害の成否を判断する際の構成変更容易性判断の基準時について特許出願後侵害時まで公知資料を参酌できるということを表明した点で意義がある。こうした判断は、特許出願又は特許登録後の事情により第三者が単なる回避設計で特許権を実施できなくしたもので、特許権者の保護を強化する判決といえる。
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