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拡大先願規定の適用時における発明の同一性の判断(2017フ2369)

1. 事件の概要
発明の名称を「換気用給気装置」とする特許発明についてAは、特許発明の出願日以降に公開された「室内の快適な環境造成及び制御システム」に係る発明を比較対象発明とし、特許法第29条第3項のいわゆる「拡大先願」規定に違反するので無効となるべきであると主張して特許無効審判を請求した。
特許発明と比較対象発明は、建物の給気配管を暖房配管に近接する位置に設置し、暖房配管の熱を利用して給気配管に供給される空気の温度を多少増加させる点で共通点があるが、特許発明は、給気配管を暖房配管の下面に配置すると限定しているが、比較対象発明の明細書又は図面には、空気配管と暖房ホースとの位置関係についての説明や限定事項がない点で差異があった。

2. 特許法院の判断
特許法院では、暖房ホースが埋設された室内床に空気配管を共に埋設し、外部空気が加熱又は冷却された状態で室内に供給されて熱損失を低減しようとする技術的思想の核心に差異がなく、比較対象発明の記載等の諸事情を考慮すれば、暖房ホースの側面又は下面に空気配管が位置する構造が比較対象発明に内在していると判断し、これを特許発明のように暖房ホースの下面にのみ変更することは、通常の技術者が通常採用することができる程度の微細な変更に過ぎず、それによる作用効果の差異がないから、両発明は実質的に同一であると判断した。

3. 大法院の判断
大法院では「第29条第3項でいう発明の同一性は、発明の進歩性とは区別されるもので、両発明の技術的構成が同一であるか否かによるが発明の効果も参酌して判断しなければならない。両発明の技術的構成に差異があっても、その差異が、課題解決のための具体的手段において周知慣用技術の付加・削除・変更等に過ぎないので、新たな効果が生じない程度の微細な差異があるだけであれば、両発明は実質的に同一であるといえる。しかし、両発明の技術的構成の差異が上記のような程度から外れるならば、たとえその差異が、通常の技術者が容易に導出することができる範囲内であるとしても、両発明が同一であるとはいえない」とした。
本件において大法院は「特許発明は、給気配管を暖房配管の下面に配置することによって、暖房配管の下部に放出されて損失される熱を、給気配管を通して室内に供給される空気を暖めるのに活用することができ、その分熱損失を低減することができるので、比較対象発明に比べ新たな効果を有し、よって、両発明は同一であるとはいえない」とした。

4. 大法院判断の意義
本判決は、拡大先願規定の適用時における発明の同一性の判断基準として、構成の差異が周知慣用技術の適用に過ぎず、これにより効果の差異がなければ、発明が同一であると認めることができるが、構成の差異により効果の差異が生じるならば、通常の技術者が容易に発明することができる程度の差異に過ぎないとしても、発明の同一性を認めることができないということを明確にした点で意義がある。
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