条約優先権主張出願の特許要件適用の基準日が優先権主張日に遡及する発明の範囲(2019フ10265)
韓国特許法第54条により工業所有権の保護のためのパリ条約の当事国に特許出願した後、同一の発明を韓国に特許出願して優先権を主張するときは、進歩性等の特許要件に関する規定を適用するとき、その当事国に出願した日(以下「優先権主張日」という)を韓国に特許出願した日とみなす。条約優先権主張出願に関連して、特許要件適用の基準日が優先権主張日に遡及する発明について明示的に判断した事例がなかった。
国内優先権主張出願の特許要件適用基準日遡及範囲に関連して、大法院では2012フ2999判決において、韓国特許法第55条第3項により特許要件適用の基準日が優先権主張日に遡及する発明は、優先権主張を伴う特許出願された発明のうち優先権主張の基礎となる先の出願の最初明細書等に記載された事項の範囲内にあるものに限定されるが、ここで「優先権主張の基礎となる先の出願の最初明細書等に記載された事項」とは、優先権主張の基礎となる先の出願の最初明細書等に明示的に記載されている事項であるか、又は明示的な記載がなくても、通常の技術者が優先権主張日当時の技術常識に照らし優先権主張を伴う特許出願された発明が先の出願の最初明細書等に記載されているのと同様であると理解できる事項を意味すると判示した。
本件事実関係
本件特許発明は条約優先権主張を伴い、本件特許発明の請求項3では、「抗CD20抗体を500~1500mg/m2の用量で投与する」と記載して投与用量を限定しており、これに関連して、先の出願の最初明細書の請求項には、抗CD20抗体の投与用量について、0.1~30mg/kgの用量で投与するか、又は4週間1週間あたり375mg/m2の用量で注入すると記載しており、実施例では、第1投与量として375mg/m2を投与した後、続いて500~1500mg/m2の投与量で治療されると記載しているだけで、最初明細書には、抗CD20抗体を500~1500mg/m2の均一用量で投与するという点について記載はなかった。
大法院の判断
大法院では、条約優先権主張出願の特許要件適用基準日遡及範囲に関連して、国内優先権主張出願と同じ基準が適用されるとしながら、先の出願の最初明細書の請求項には、投与量が本件請求項3とは異なって記載されており、実施例では、抗CD20抗体の500~1500mg/m2の用量投与が記載されているが、均一用量の投与ではなく、第1投与後の後続投与量として記載されているから、本件請求項3の記載は、先の出願の最初明細書に明示的に記載されているか、又は記載されているのと同様であると理解できない場合に該当すると判断した。
大法院の判断の意義
本判決は、条約優先権主張出願の特許要件適用の基準日が優先権主張日に遡及する発明の範囲に対して、国内優先権主張出願と同じ基準が適用されることを明示したという点で意義がある。 |
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