特許侵害訴訟における自白の成立及び取消に関する事例
1. 序
大法院は最近、請求項の構成要素の一部に関する被告(侵害者)の裁判上の自白が錯誤によるものと取り消され得るという内容の原審法院の判決を破棄し、特許侵害訴訟における裁判上の自白及び自白の取消に関する判断基準を説示した(大法院2022年1月27日宣告2019ダ277751判決)。
2. 関連法理
特許侵害訴訟において、相手方が製造する製品(以下「侵害対象製品」という)がどのような構成要素を有しているかは、侵害判断の前提となる主要事実として裁判上の自白の対象となり得る(大法院2006年8月24日宣告2004フ905判決等参照)。「侵害対象製品がどのような構成要素を有している」という表現が、事実に関する陳述なのか、それともその構成要素が特許発明の構成要素と同一又は均等であるという法的判断ないし評価に関する陳述なのかは、当事者陳述の具体的内容と経緯、弁論の進行経過等を総合的に考慮して判断しなければならない。そして、いったん裁判上の自白が成立すれば、それが適法に取り消されない限り、法院はこれに拘束されるので、法院は自白と背馳する事実を証拠に基づき認定することができない(大法院2018年10月4日宣告2016ダ41869判決等参照)。
3. 事案の内容
原審において、被告(侵害者)は被告の侵害対象製品が原告(特許権者)の特許の請求項1を侵害しないと主張しながら構成要素Bを除いた残りの構成要素(構成要素Aを含む)は全て備えていると陳述し、原告が侵害対象製品が構成要素Aを備えているかどうかについての鑑定申請をすると、鑑定は必要ないとの意見を陳述し、鑑定申請が撤回された。しかし、被告の原告特許に対する無効審決取消訴訟で無効事由が認められず、請求棄却判決が下されると、被告は構成要素Aに関する従前の陳述を繰り返した。
4. 大法院の判断
(1)自白の成否の判断
被告の陳述内容及び弁論の進行経過に照らし、侵害対象製品が構成要素Aを備えているという被告の陳述は、侵害対象製品の対応構成が構成要素Aと同一又は均等であるか等の法的判断ないし評価でなく、構成要素A自体を備えているという事実に関する陳述であって、裁判上の自白が成立するとみるのが妥当である。
(2)自白の取消の適否の判断
原審では、被告の陳述が裁判上の自白に該当するとしても、これは、原審でなされた鑑定結果に基づき真実に反し、錯誤によるものであるので、適法に取り消されたものと判断したが、
鑑定結果は侵害対象製品が原告の他の特許を侵害するかを対象としたものであり、さらに構成要素Aである平均膜厚が測定されてもおらず、鑑定結果では特定地点での厚み偏差が測定されているが、その結果が原告の独自実験結果にあらわれた平均膜厚算定の根拠となる厚み偏差範囲と差があるという点だけでは、その自白が真実に反するかどうかも分からない。
したがって、被告の自白が真実に反するかどうかに関して必要な審理が尽くされていないので、これについての審理が必要である。
5. コメント
本判決は、特許侵害訴訟において、侵害対象製品が請求項の構成要素を含んでいるとの陳述が裁判上の自白に該当するかどうかと、この自白が取り消し可能な事情に関する基準を再確認したという点で、意義がある。
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