パラメータ発明の記載要件の強化に関する審査基準の改訂
パラメータ発明は、物理的・化学的特性値について当該技術分野において標準的なものでないか慣用されていないパラメータを出願人が任意に創出し、若しくはこれら複数の変数間の相関関係を用いて演算式でパラメータ化した後、発明の構成要素の一部とする発明を意味する。
1. パラメータ発明の既存の記載要件
韓国特許庁の審査基準によると、パラメータで特定される発明が容易に実施されるためには、その技術分野における通常の知識を有する者が発明を具現するための具体的な手段、発明の技術的課題及びその解決手段等が明確に理解できるように、パラメータに関する具体的な技術内容を明細書に記載しなければならない。
ただし、パラメータに関する具体的な技術内容が発明の詳細な説明又は図面に明示的に記載されていなかったとしても、出願時の技術常識を勘案するとき明確に理解できる場合は、これを理由に発明が容易に実施できないと判断することはない。
実務的には、化学式で構造を示すことが難しい高分子物質発明の場合、さまざまなパラメータを用いて技術的構成を限定するが、このとき、パラメータの測定方法や条件、そして当該パラメータの再現可能性が問題となって当該特許が無効となった場合もあった。これにより、韓国特許庁は、パラメータ発明の記載要件をさらに強化した。
2. 改訂審査基準でのパラメータ発明の記載要件の強化
2020年12月の改訂審査基準では、パラメータで特定される発明が発明の詳細な説明の記載要件を充足するためには、通常の技術者が出願時の技術水準からみて、過度の実験や特殊な知識を付加せずとも明細書の記載により新たなパラメータを含む発明の全ての構成を特許請求の範囲において限定した数値範囲の全体にわたり正確に理解することによって、これを用いることができ、上記構成から得られる効果も、数値範囲の全体にわたり明細書において具体的な実験、実施例等で証明され、若しくは通常の技術者が出願時の技術水準からみて、これを十分に予測できなければならないとしつつ、次のような4つの記載要件を充足していない例を羅列している。
(1) パラメータの定義及び技術的意味が明確に記載されていない場合
(2) パラメータにより限定された物の製造方法が記載されていない場合
(3) パラメータの効果を確認することができる実施例及び比較例が記載されていない場合
(4) パラメータと関連した変数の測定のための方法、条件、器具について説明が記載されていない場合
このうち、測定方法と関連した例では、当該パラメータが出願時において公知であったパラメータであり、通常の技術者が実施するために明確に確認することができる場合であれば、具体的な測定方法についての記載を省略することができるが、一般的なパラメータであっても複数の測定方法があり、測定方法に応じて適切な誤差範囲から外れて異なる結果値が算出される場合であれば、通常の技術者が出願時の技術水準からみて、特殊な知識を付加せずとも正確に理解し、これを再現することができる程度に発明の詳細な説明が記載されているとみることができないと記述している。すなわち、測定方法に応じてパラメータ値が敏感に変化する場合、これと関連した内容が明細書に記載されることを特別に要求していることに注意が必要である。
3. コメント
従来は、パラメータ発明の記載要件を特別に厳格に判断していなかったが、一部の高分子物質発明において用いられたパラメータについて測定方法や再現可能性が問題となって当該特許が無効とまでなり、今回の改訂審査基準では、測定方法の側面からパラメータ発明の記載要件が強化された。したがって、測定方法に応じてパラメータ値が敏感に変化するパラメータ発明の場合、明細書の記載に一層留意する必要がある。
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