国際特許出願における国語翻訳文の取扱いと誤訳への対応
1. はじめに
「特許協力条約」に基づき国際出願日が認められた国際出願であって、大韓民国を指定国に指定した国際出願は、その国際出願日に大韓民国に出願された特許出願とみなされる。このとき、韓国語以外の外国語で出願した国際出願の場合、所定期間内に韓国語翻訳文を提出しなければならず、翻訳文を提出しなければ国際特許出願が取下げとみなされる。
2. 翻訳文提出時における原文および翻訳文の取扱い
1) 原文主義への改正
従来は、国際特許出願の翻訳文を、国際出願日に提出した明細書、図面および要約書とみなし、翻訳文主義をとっていたが、韓国特許法の改正により、2015年1月1日以降の国際出願の場合、国際出願の原文を、国際出願日に提出した明細書および図面とみなし、原文主義へと転換した。
2) 2015年1月1日以前の国際出願の原文および翻訳文の取扱い
2015年1月1日以前の国際出願の場合、翻訳文が、国際出願日に提出した明細書、図面および要約書とみなされ、翻訳文に記載された内容に基づき審査が行われた。したがって、原文に基づいた一連の主張(例えば、原文に基づく分割出願など)が不可能であった。
3) 2015年1月1日以降の国際出願の原文および翻訳文の取扱い
2015年1月1日以降の国際出願の場合、原文が、国際出願日に提出した明細書および図面とみなされ、翻訳文は、原文の内容を補正したものとみなされる。したがって、原文に記載された発明の範囲内で分割出願が可能となるなど、原文に記載され内容に対するより充実な保護が可能となった。
3. 翻訳文の誤訳への対応
外国語で出願された国際特許出願の翻訳文に誤訳がある場合、2015年1月1日以前の出願と2015年1月1日以降の出願に応じて対応策が異なる。
1) 2015年1月1日以前の国際出願
翻訳文が、国際出願日に出願された明細書、図面および要約書となるため、原文と一致するように誤訳を修正する場合、新規事項の追加と判断される可能性がある。
したがって、誤訳を正すためには、明細書を補正するとともに意見書を通じてこのような補正が翻訳文に記載された内容に照らし明らかに誤った記載を正す補正に過ぎない旨主張する必要があるが、審査官によっては補正が認められない場合がある。
2) 2015年1月1日以降の国際出願
韓国特許実務下での補正可能期間に誤訳を訂正する制度が設けられて(韓国特許法第201条第6項)、翻訳文の誤訳を正すことができるようになった。誤訳を訂正した場合、翻訳文が原文を補正したものとみなされる補正効果が付与されないため、誤訳の訂正とは別に明細書を補正しなければならない。
4. おわりに
2015年1月1日より施行された改正法により、これまで対応が容易でなかった翻訳文の誤訳の問題を解消できるようになった。これにより、予期せぬ誤訳が生じた場合、誤訳の訂正制度を通じて、これを正すことができる。しかし、誤訳訂正時に費用が発生するので、出願時に良質な翻訳文を提出するのが望ましい。
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