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懲罰的損害賠償」及び「被告の具体的行為態様の提示義務

1. 導入の趣旨
韓国の特許侵害訴訟における損害賠償額の中間値('97〜'17)は約6千万ウォンで、米国の損害賠償額の中間値('97〜'16)である約65.7億ウォンに比べて非常に少ない。この数値は両国の経済規模を考慮しても9分の1に過ぎない水準で、これまで特許侵害の被害企業に対する十分な補償がなされていなかったことを傍証している。

知的財産について、市場では、それ相応の価格を正当に支払うよりは、侵害を通じて利益を得て、侵害が摘発されれば賠償額を支払うことがより利得という認識が形成されていた。被害企業も訴訟で勝っても損害賠償額が十分でないため、訴訟を放棄する場合が多く、知的財産侵害の悪循環が続いていた。

したがって、2019年7月9日に施行される改正法では、特許権の侵害行為が故意である場合、損害として認められた金額の3倍以内で賠償額を定めることができるようにする「懲罰的損害賠償制度」と、特許権侵害訴訟における特許権者等の立証責任を緩和するための「具体的行為態様の提示義務」を導入した。

2. 特許権侵害に対する特許権者の措置
(1) 民事上の措置
1) 侵害禁止及び予防請求権
特許権者は、自己の権利を侵害した者又は侵害するおそれのある者に対し、故意又は過失の有無を問わず、侵害禁止及び予防を請求することができる。

2) 損害賠償請求権
特許権者は、故意又は過失により自己の特許権を侵害した者に対し、侵害により被った損害の賠償を請求することができ、特許権侵害による損害賠償請求の場合、侵害事実及び損害額の立証が難しいため、立証責任の緩和乃至転換のために損害額の算定、推定、擬制、参酌、認定等、特別規定を設けてこれを補完する。

3) 信用回復請求権
法院は、故意又は過失により特許権を侵害して特許権者の業務上の信用を害した者に対し、特許権者の請求により損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに信用回復に必要な措置を命ずることができる。

4) 不当利得返還請求権
特許権者は、法律上の原因なく特許権を侵害して利益を得て、それにより損害を及ぼした者に対し、故意又は過失にかかわらず、不当利得返還請求権を行使することができる。

(2) 刑事上の措置
1) 侵害罪
特許権又は専用実施権を侵害した者は、7年以下の懲役若しくは1億ウォン以下の罰金に処し、親告罪である。

2) 没収
侵害罪に当たる侵害行為を組成した物又はその侵害行為から生じた物は没収するか、又は被害者の請求によりその物を被害者に交付することを宣告しなければならず、被害者は物を受けた場合には、その物の価額を超過する損害額についてのみ賠償を請求することができる。

3) 両罰規定
法人の代表者又は法人若しくは個人の代理人、使用人、その他の従業員がその法人又は個人の業務に関して侵害罪の行為をすれば、その行為者を罰するほか、その法人には3億ウォン以下の罰金刑を、その個人には1億ウォン以下の罰金刑を科する。但し、法人又は個人がその違反行為を防止するために、当該業務に関して相当の注意及び監督を怠らなかった場合には、この限りでない。

3. 損害賠償請求権のうちの懲罰的損害賠償制度(特許法第128条第8項及び第9項)
法院は、他人の特許権を侵害した行為が意図的なものと認められる場合には、立証責任の緩和乃至転換のために損害額の算定、推定、擬制、参酌、認定等、特別規定に基づいて損害と認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができ、賠償額を判断する際には、1. 侵害行為をした者の優越的地位の有無、2. 故意又は損害発生のおそれを認識した程度、3. 侵害行為により特許権者及び専用実施権者が被った被害の規模、4. 侵害行為により侵害した者が得た経済的利益、5. 侵害行為の期間及び回数等、6. 侵害行為による罰金、7. 侵害行為をした者の財産状態、8. 侵害行為をした者の被害救済努力の程度を考慮しなければならない。

これまでは、損害額を算定するにあたっては、その侵害行為により得た利益額又は特許発明の実施について通常受けることができる金額に基づく等、実損賠償の原則に従っていたが、意図的な侵害行為をした者に対する制裁手段としての実効性が低いため、侵害行為を防止するに不足し、2019年7月9日に施行される改正法では、損害額の3倍を超えない範囲内で賠償額を決定する懲罰的損害賠償制度を導入して、特許権者の保護を強化した。

4. 被告の具体的行為態様の提示義務(特許法第126条の2)
特許権侵害訴訟において特許権者が主張する侵害行為の具体的行為態様を否認する当事者は、自己の具体的行為態様を提示しなければならない。

すなわち、特許権者等が主張する侵害行為を否認する被告に自己の具体的行為態様を提示させることが、i) 特許権者等による侵害事実の立証が非常に難しい点、ii) 被告が単なる否認だけで防御できないようにし、iii) 当該訴訟の適正性・迅速性が向上するのに寄与する点を考慮して、2019年7月9日に施行される改正法に導入された。一方、特許権者等が特許権侵害とは関係なく相手方の未公開技術又は営業秘密等を確保する目的で訴訟を濫用し得る点を考慮して、法院は、当事者が自己の具体的行為態様を提示することができない正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために当事者に資料の提出を命ずることができ、但しその資料の所持者が資料の提出を拒絶することに正当な理由があれば、この限りでない。

当事者が正当な理由なく自己の具体的行為態様を提示しない場合には、法院は特許権者が主張する侵害行為の具体的行為態様を真実なものと認めることができる。

5. 結論
2019年7月9日に施行される改正法により歪曲した市場の秩序を正し、知的財産保護基盤を強化する様々な制度的装置が設けられることで、特許権者をより実質的に保護することができる土台になるものと考えられる。

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