模倣商標出願の登録を阻止する方法-情報提供及び異議申立て
I. 情報提供及び異議申立ての意義
情報提供及び異議申立ては、商標審査の公正性と完全性を担保し、不実権利が発生することを予防する制度である。
Ⅱ. 情報提供及び異議申立ての比較
1. 要件
(1) 主体
情報提供及び異議申立ては、何人も提起することができ、利害関係があることを要求しない。
(2) 客体
情報提供及び異議申立ての理由は、拒絶理由と同様である。
(3) 時期
情報提供の提出は、商標出願が登録決定となる前まで可能であるため、出願公告後も可能である反面、異議申立ては、出願公告日から2か月以内に提起しなければならない。
2. 手続き
(1) 情報提供
審査官は、提供された情報を活用して出願商標について意見提出通知書を発行するなど審査に参考とする。情報提供がある場合、審査官は1次審査決定時に1次審査結果と共に提供された情報を活用したか否かを情報提供者に通知することになっている。
これまでは、1次審査決定(意見提出通知又は出願公告決定)前に情報提供がある場合、意見提出通知時にのみ提供された情報を活用したか否かを通知し、出願公告時には通知の義務はなかったため、情報提供者は異議申立てを提起する機会を逸するおそれがあった。
しかし、商標出願の審査において、第三者の情報提供がある場合、出願公告決定時にも情報提供者に審査結果及び提供された情報を活用したか否かが通知されるため、情報提供者が異議申立ての機会を逸しないようにした。
(2) 異議申立て
商標出願審査に参考資料として活用される情報提供とは異なり、異議申立ては、三名の審査官から構成される審査官合議体において決定する。異議申立書が提出されると、異議申立書の副本を出願人に送達し、答弁書を提出する機会を与えなければならず、異議申立人も答弁書に対する意見書を提出することができる。
3. 効果
(1) 情報提供
情報提供について別途の決定は下さないが、審査官は提供された情報を参考・活用して審査を行うため、審査官の注意を喚起して模倣商標出願について拒絶理由通知を導くことができる。情報提供が受け入れられれば、出願商標について意見提出通知書が発行され、情報提供が受け入れられなければ、出願商標は出願公告される。
(2) 異議申立て
異議申立ては、審査官合議体が両当事者の意見を収斂して決定する。異議申立てで勝てば、出願商標は拒絶決定され、異議申立てで負ければ、出願商標は登録決定される。異議決定に対する不服は不可能であるが、出願人は拒絶決定不服審判を通じて、異議申立人は無効審判を通じて不服を申立てることができる。
Ⅲ. 情報提供及び異議申立ての長短
1. 情報提供の長短
情報提供は、提出期間に比較的制限がないため審査初期に審査官に拒絶理由に関する情報を提供することで商標出願の審査に影響を与える。また、提出資料に関する規定がないため、著名商標に関する資料を自由に提出できる。情報提供に係る庁手数料はなく、弊所手数料は異議申立てに比べて安い。
情報提供について別途の審査及び決定がなされない審査影響を与えるのに制限がある。
2. 異議申立ての長短
異議申立ては、情報提供と同様に商標出願が登録される前に審査に影響を与えるが、出願人の答弁又は意見を収斂した後に別途の審査及び決定がなされるため、より厳格である。さらに、無効審判より簡便な手続きで商標登録を阻止できる。
但し、異議申立ては、出願公告日から2か月以内に提起しなければならないという時期的制限があり、提出資料が情報提供よりも厳しく判断される。
Ⅳ. 情報提供及び異議申立ての活用方策
商標権保護に常に関心を持ち、同一・類似の出願商標について継続モニタリングする必要があり、出願公告前に審査初期に負担のない資料提出及び簡便な手続きで審査に影響を与える情報提供を行い、早期に審査に関与して出願商標の登録を阻止することが経済的である。
情報提供にもかかわらず当該商標が出願公告となった場合、異議申立てを通じて審査官合議体の審査を受けて異議決定を導くことができ、異議申立てにもかかわらず出願商標が登録された場合、異議決定に対する不服は不可能であるものの、無効審判を通じて不服を申立てることができる。
*現在弊所では周期的に出願・公告商標についてウォッチングしており、お客様からご依頼がある場合、当該商標と混同する可能性のある商標についての体系的ウォッチングを通じて模倣商標出願に対する情報提供や異議申立てについてご案内しております。
|
|