出願商標は先登録商標と類似しないとした判決(特許法院2023ホ13483)
弁理士 鄭 錫鳥
特許法院は、出願商標は先登録商標と外観、呼称、観念が異なり、一般需要者がその商品の出所に関して誤認・混同を引き起こさせるおそれがない商標に該当すると判決した。
1.事件の概要
(1)特許庁は、43類「簡易食堂サービス業」等を指定サービス業とする出願商標(出願番号第40-2020-159457号)は、43類「簡易食堂サービス業」等を指定サービス業とする先登録商標(第40-366950号)と類似するので商標法第34条第1項第7号に該当すると登録拒絶決定をした(2021年10月1日)。
(2)原告はこの拒絶決定に対し、特許審判院に不服審判を請求した(2022年3月17日)。
(3)特許審判院は、出願商標は先登録商標と標章が類似し、指定サービス業も類似するので商標法第34条第1項第7号に該当すると審判請求を棄却した(2023年7月26日)。
(4)原告は特許審判院の審決を不服として、特許法院に審決取消訴訟を提起した。
2.特許法院判決(2024年4月4日)
(1)出願商標「図形+월간맥주/月刊麥酒」
①出願商標を構成する「図形」は、ビールの原料である大麦をモチーフにしたもので、ビールを超えた特定の観念が導かれるとはみがたく、「ビール」は指定サービス業において提供される商品で、識別力が認められないとしても、「월간」は「1か月間」等を意味し、「월간」という単語が含まれた複数の商号が使用されている実態に照らし、「월간」だけでは一般需要者又は取引者がその指定サービス業の出所を知ることができるとはみがたい。
②「월간국밥」、「월간윤」、「월간식당 윤」等、월간が含まれた商標が第43類のレストラン及びホテルサービス業等に登録されている事情を勘案すると、出願商標が「월간」とのみ分離認識、又は呼称されるとは思われない。
(2)先登録商標 「월간피자」
①ハングル部分に含まれた図形は、「ピザ」を超えた新たな観念が導かれるとはみることができず、ハングル部分も4音節で構成された標章で、全体で呼称されることに困難はない。
②「월간피자」の「피자」は商品の普通名称又は業種表示に該当し、識別力が認められないとしても、「월간」部分それ自体だけでは指定サービス業との関係において出所表示機能を果たすとはみがたい。
(3)判断
①出願商標と先登録商標は、全体的な形状、構成単語数、書体等に差異があるので、外観が類似しない。
②出願商標は「ウォルガンメクチュ」と呼称されるのに対し、先登録商標は「ウォルガンピザ」と呼称されるので、呼称も類似しない。
③出願商標は「1か月間運営するビール屋」又は「1か月毎に製造するビール屋」等の観念を有し、先登録商標は「1か月間運営するピザ屋」等の観念を有するので、観念も類似しない。
したがって、出願商標と先登録商標は外観、呼称、観念すべてが異なるので、一般需要者がその商品の出所に関して誤認・混同を引き起こさせるおそれがあるとは言えないから、商標法第34条第1項第7号に該当し、商標登録を受けることができないとした審決は違法である。
3.むすび
特許審判院は、出願商標と先登録商標を構成する図形と、指定サービス業において提供される「ビール」及び「ピザ」は識別力がないものであるから、出願商標と先登録商標を構成する「월간」を識別力ある唯一の要素とみて、出願商標と先登録商標を類似する商標と判断した。
反面、特許法院は、「월간」は「1か月間」又は「1か月に1度」を意味し、「월간」が含まれた複数の商号が使用されており、「월간국밥」、「월간윤」、「월간식당 윤」等がレストラン及びホテルサービス業等に商標登録されていることを勘案すると、出願商標と先登録商標は「월간」とのみ分離認識、又は呼称されないから、特許審判院の審決は違法との判決をした。
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