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不使用取消審判の商標不使用の正当な理由(商標法第119条第3項ただし書)
[特許法院2024年5月9日宣告2023ホ13971判決]

弁理士 趙 聲蓮

1.序論
商標法では、登録商標がその指定商品について登録日から3年以上国内において使用されていない場合、その商標登録を取り消すことができるように規定しているが(第119条第1項第3号)、これは、商標登録主義の弊害を是正し、他人の商標選択の機会を拡大するために登録商標使用の義務を課し、商標不使用に対して制裁できるようにすることにその立法趣旨がある。
ただし、商標法では、登録商標が使用されていなくても、これについての正当な理由を証明した場合は、商標登録の取消しを免れるように規定している(第119条第3項ただし書)。これに関連し、大法院では、「『正当な理由』とは、疾病その他天災等の不可抗力により営業をすることができない場合だけでなく、法律による規制、販売禁止、又は国家の輸入制限措置等によりやむを得ず登録商標の指定商品が国内において一般的・正常的に取引できない場合のように、商標権者の帰責事由によらない商標不使用の場合も含まれる(大法院1982年2月23日宣告80フ70判決、大法院2001年4月24日宣告2001フ188判決等参照)。」として、その判断基準を定立してきた。
ところが、最近、特許法院判決において、上記大法院において正当な理由の一つとして例示している「法律による規制」に該当する具体的、個別的事案を認めているところ、以下にて検討したい。

2.基礎事実
(1)原告の本件登録商標(以下、「本件登録商標」という。)
標章: 図形 + Tirr Lirr
(出願日/登録日/登録番号:2019年1月16日/2019年8月26日/商標登録第1514207号)

(2)原告の先登録商標及び先登録サービス標(以下、原告の「先登録商標等」という。)
標章:図形 + Tirr Lirr POETIC JEWELRY 티르리르
(出願日/登録日/登録番号:2008年11月11日/2009年12月14日/商標登録第0808904
号)

標章:図形 + Tirr Lirr POETIC JEWELRY 티르리르
(出願日/登録日/登録番号:2008年11月11日/2009年11月23日/サービス標登録第0191917号)

(3)原告の先使用商標等
標章:Tirr Lirr 及び 티르리르

(4)被告の登録商標等
標章:TIRTIR
(出願日/登録日/登録番号:2017年5月2日/2017年12月6日/商標登録第1310418号)

標章:티르티르
(出願日/登録日/登録番号:2017年5月2日/2017年12月6日/商標登録第1310429号)

3.原告と被告間の商標紛争の事実関係
(1)原告は2019年10月8日付にて被告の登録商標等について原告の先登録商標等及び先使用商標等を根拠に商標登録無効審判を請求したが(商標法第34条第1項第7号、第12号及び第13号)、これらの審判の認容審決(無効審決)等は最終的に大法院の2023年7月27日付上告棄却判決をもって確定し[2023フ10408及び2023フ10415]、被告の登録商標等は無効となった。

(2)一方、被告も2020年6月頃、ソウル中央地方検察庁に原告を不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律違反及び業務妨害の嫌疑で告訴したが[2020ヒョンジェ104022]、ソウル中央地方検察庁は2021年1月18日付にて嫌疑なし(証拠不十分)処分をした。

(3)また、被告は2021年3月19日付にて、原告は周知、著名な商標である被告の登録商標等を知りつつ原告の先登録商標「図形 + Tirr Lirr POETIC JEWELRY 티르리르」をそれに類似する実使用商標「티르리르」に変形して使用したと主張するとともに商標登録取消審判(商標法第119条第1項第1号)を請求したが、当該審判は棄却され、最終的に大法院の2023年7月27日付上告棄却判決をもって確定した[2023フ10392]。

4.特許法院の判決
(1)本件の経緯
被告が2022年8月29日付にて請求した本件登録商標に対する不使用取消審判について、特許審判院は、本件登録商標の不使用及びこれについての正当な理由がなかったことを根拠に認容審決をしたが、これを不服とした原告が特許法院に審決取消訴訟を提起し、よって特許法院は、本件登録商標の不使用には正当な理由があったことを認めて審決取消判決をした。

(2)具体的判断
当該判決では、不使用取消審判前の原告と被告間の商標紛争の事実関係を認め、当該事実関係による本件登録商標の不使用は「法律による規制」等によるやむを得ない結果と認めた。



具体的には、特許法院裁判部は、原告の本件登録商標の使用は、当該商標の登録無効審決の確定いかんにかかわらず、被告の登録商標等に対する商標権侵害に該当する可能性が大きく、これは刑事処罰の対象で(商標法第230条)親告罪ではないため被害者の告訴がなくても公訴が提起される危険があったと認めた。
これは、最近の大法院合議体判決[大法院2021年3月18日宣告2018ダ253444全員合議体判決]において、登録商標の使用だとしても、当該登録商標が他人の先願登録商標に類似し、商品の面で同一、類似であれば、当該登録商標の無効審決の確定いかんにかかわらず、他人の先願登録商標に対する侵害が成立するとした判決が前提となったものであり、原告にとっては、本件登録商標の無効審決の確定いかんにかかわらず、被告の商標権侵害の危険があったことを認めたものと解することできる。
さらに、特許法院裁判部は、被告が原告を相手に、商標権侵害を根拠に民・刑事上の法的措置をとっても、原告が被告の登録商標等の無効事由を根拠とする権利濫用の抗弁等を通じて商標権侵害を避けることができた可能性に関連しては、商標法第119条第3項ただし書の商標不使用についての「正当な理由」の一つとして例示している「法律による規制」等は必ずしも法律により絶対的に禁止される場合のみに限定してみるのではないとし、商標権侵害に対する民・刑事上の責任を負う危険が現存する状況で、商標権者に後願登録商標の使用を強要するのは、不使用取消審判制度の趣旨である登録商標の使用促進及び不使用の制裁という目的達成に必要な程度を超えるものであって、商標法の目的である需要者の利益保護(商標法第1条)にも合致しないと判示した。

5.判決の意義
本判決は、商標不使用の正当な理由に該当する「法律による規制」に関連して、これまで判例において判断してきた特定の行政法規の当否(例:保温保冷水筒関連、品質経営及び工業製品安全管理法等において要求する安全検査は、正当な理由に該当する法律による規制で不認定、薬品を製造・販売するための食品医薬品安全処の原料医薬品登録と品目許可に必要な各種手続きは、正当な理由に該当する法律による規制で認定等)においてひいては、商標権者の他人の商標権侵害による民・刑事上の法的責任の危険もこれに該当する具体的、個別的事案に該当すると認めたことにその意義があるといえよう。
ただし、本件の被告は大法院に上告したところ、これに対する大法院の最終判断を待つ必要がある。
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