出願商標「ZEZU」は顕著な地理的名称に該当するとした特許法院判決(2023ホ11500)
弁理士 鄭 錫鳥
1.事件の概要
(1)商品類第5類の食餌補充剤(dietary supplements)、動物用食餌補充剤(dietary supplements for animals)、乳児用食品(food for babies)、消毒剤(disinfectants)、抗菌性せっけん(antibacterial soap)、抗菌性手洗浄剤(antibacterial handwashes)等を指定商品とした出願商標「ZEZU(出願番号:40-2020-0147000、出願日:2020年8月21日)」について、商標法第33条第1項第4号(顕著な地理的名称)に該当するとの理由で、特許庁は拒絶決定(2022年1月7日)。
(2)原告は特許庁拒絶決定について2022年1月31日に特許審判院に拒絶決定不服審判を請求(審判番号:2022ウォン203)。
(3)特許審判院は、事件出願商標は商標法第33条第1項第4号に該当すると審判請求を棄却(2023年3月28日)。
(4)原告は特許審判院の審決に対して不服を申し立て、特許法院に審決取消訴訟を提起。
2.特許法院判決(2023年10月19日)
(1)原告の主張
事件出願商標「ZEZU」は、顕著な地理的名称である「済州」の一般的な英文表記である「JEJU」又は「CHEJU」と外観が異なり、「済州」の英文表記として「ZEZU」を用いる者はほとんどいない。
したがって、一般需要者が事件出願商標に接した後、顕著な地理的名称である「済州」を即座に連想する可能性は低いので、顕著な地理的名称に該当しない。
(2)特許法院の判断
事件出願商標が顕著な地理的名称である「済州」の一般的な英文名称である「JEJU」又は「CHEJU」と外観上差異はあるが、事件出願商標は一般需要者に我が国の有名観光地として顕著な地理的名称である「済州」として認識され呼称・観念され得るから、事件出願商標は商標法第33条第1項第4号に該当する。
事件出願商標は「ZEZU」という文字列のみから構成された商標であり、該文字列は特別な辞書的意味が存在しない造語に過ぎないから、事件出願商標が顕著な地理的名称である「済州」に関係なく新たな観念を生むわけでもない。
したがって、事件出願商標は商標法第33条第1項第4号に該当し、これと結論を同じくする審決は適法である。
3.まとめ
2000年のローマ字表記法の改定前は「Cheju」と使用されていたが、2000年に改定されたローマ字表記法に則り2000年以降は「Jeju」に変更されて使用されている。事件出願商標「ZEZU」は、済州島の過去の英文表記「CHEJU」及び現在の英文表記「JEJU」とは綴りが全く異なるものであり、誰も済州島の英文表記を「ZEZU」とは書さないはずであり、地理的名称である済州島の英文表記として認識するとは思われない。
しかしながら特許法院は、事件出願商標「ZEZU」は特別な辞書的意味が存在しない造語に過ぎないと認めつつも、地理的名称である「済州」として認識され呼称・観念され得るから、顕著な地理的名称に該当すると判決した。
この判決が完全に首肯できるものではないが、商標を出願する上で参考にする必要があると思われる。
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