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医薬物質特許がジェネリックプロドラッグに適用されることを確認した初の判決

(特許法院2022年2月17日宣告2020ホ5832判決)

1.審判経過
アストラゼネカ(AstraZeneca)社が開発した「フォシーガ(Forxiga®、ダパグリフロジン)」はSGLT2阻害剤で、2型糖尿病、心不全および腎臓治療に広範な適応症を持っているオリジナル薬剤である。東亜ST(DONG-A ST)社はアストラゼネカ社の「フォシーガ」の物質特許(KR 10-0728085 B1)を回避するために、「プロドラッグ(prodrug)」技術を活用して「ダパグリフロジンフォーメート(dapagliflozin formate)」を開発し、東亜ST社は2018年4月にアストラゼネカ社を相手取り特許審判院に消極的権利範囲確認を請求した。当時、特許審判院は東亜ST社の勝訴を認めた。これに対しアストラゼネカ社は、東亜ST社のプロドラッグ製品に含まれる成分がダパグリフロジンと同等の体内薬物動態を示し、ダパグリフロジンに転換されて効果を発揮するため、フォシーガの物質特許を侵害するとの理由で、2018年8月に審決取消訴訟を提起し、特許法院は2022年2月17日、過去の特許審判院の審決を覆し、東亜ST社の「フォシーガプロドラッグ」がアストラゼネカ社の特許権利範囲に属すると判決した。

2.特許法院の判断
特許審判院は、確認対象発明(ダパグリフロジンフォーメート)が物質特許(ダパグリフロジン)の権利範囲、具体的に文言的権利範囲と均等範囲のいずれにも属さないと判断したが、特許法院は今回の判決で、文言的権利範囲については特許審判院と同じ立場を取りながらも、均等範囲については特許審判院の判断とは異なり、確認対象発明が置換容易性の要件と禁反言の要件のいずれも満たすとみた。

(1)置換容易性要件関連
均等範囲の要件の一つである置換容易性について、特許法院は「ダパグリフロジンを確認対象発明のダパグリフロジンフォーメート形態に変更することが容易であるかどうかは、ダパグリフロジンを医薬品として開発する過程において通常の技術者であれば何人も確認対象発明のダパグリフロジンフォーメートを主成分の探索対象に含めてその物理化学的性質などを確認するであろうとみえるかを問いただして判断してみなければならない」との原則を立てた上で、
1)(ⅰ)ヒドロキシル基(hydroxyl group)を対象に選んで化学的変形を通じてエステル形態のプロドラッグをつくることは、プロドラッグ設計においてよく知られている事項である点、(ⅱ)グルコースの6番の炭素位置が、最も置換しやすく、エステラーゼ酵素が容易に接近して加水分解されやすい位置である点、(ⅲ)ギ酸は、エステル形成に多く使用されるカルボン酸の中で最も簡単な酸であり、フォーメートプロドラッグの具体的な例示が確認される点などの事情を考慮すると、通常の技術者であれば何人もダパグリフロジンを医薬品として開発する過程において確認対象発明のダパグリフロジンフォーメートを主成分の探索対象に容易に含めてその物理化学的性質(融点など)、薬剤学的性質を確認するであろうし、
2)確認対象発明が通常のスクリーニング過程において探索対象に含まれる様々な物質と比較して顕著な効果を示すとはみがたく、
3)薬品物質に係る物の発明として確認対象発明の権利範囲への属否の判断において確認対象発明の製造方法は直接関係がなく、どの経路を経ようが確認対象発明は技術的困難なく合成されるとみえるとの理由で、変更の容易性を認めた。

(2)出願経過禁反言関連
また、出願経過禁反言(estoppel)については、
1)特許庁では当時、「プロドラッグ」という表現を請求項において使用することは許さない実務を運営していたという点、
2)出願過程において「プロドラッグエステル」という用語を削除した出願人の意思は、指摘された「機能的表現」を請求項から削除することで当該拒絶理由を簡単に解消したいという意思にみえるだけで、それに概念的に含まれ得る具体的な化学構造を有する特定の化合物が権利範囲からすべて除外されることを甘受し特許を受けたいという意思にはみえないという点、
3)特許請求の範囲に「塩等が伴う並列的記載方式」なしで活性化合物である「化学式1の化合物」のみ文言的に記載されている場合にも、その活性化合物を医薬品として開発する過程において取るようになる蓋然性が十分な塩、溶媒和物などの固体形態、またはプロドラッグは、文言的に記載されていなくても、「活性化合物」の権利範囲への属否または均等関係の判断の対象に含まれ得るとみるのが妥当であるという点を根拠として、
出願人に確認対象発明を権利範囲から除外する意思があったとはみがたいと判断した。

3.判決の示唆点
本件は、「プロドラッグ(prodrug)」戦略を通じた物質特許の回避が特許権侵害に該当するとする判決を受けた国内で初めての判決である。prodrugとは、そのもの自体は効果がないが、体内に吸収されると化学的変化を起こして効果を示す薬物で、単なる塩変更薬物とは区別されている。こうした特性で製薬業界においてオリジナル医薬品の物質特許を克服する方法として注目されたが、今回の判決でブレーキがかかることになった。

特許法院は、単なる塩変更薬物では物質特許を回避することができないという既存の法理をプロドラッグに拡張し、単にプロドラッグで有効成分物質特許の権利範囲を回避することはできないという点を明確にした。また、プロドラッグによっては均等範囲に属さない場合もあるという余地を残し、事案によって合理的な解決を図れるようにしたという点で意義がある。
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