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誤記が明らかな開示の新規性及び進歩性判断における扱い(特許法院2020年12月17日宣告2019ホ4796判決)

1. 本件の争点
(1) 本件第1項発明の「第1の化合物及び第2の化合物を含む有機光電子素子用材料」の解釈

(2) 先行発明1の一般式の定義に合致しない具体例が誤記であることが明らかである場合、誤記が明らかな開示内容を新規性及び進歩性判断の基礎とすることができるかどうか

(3) 先行発明2に具体的に開示されていない構成により先行発明2が教示するものと相反する効果を達成する場合、新規性及び進歩性を否定することができるかどうか

2. 特許法院の判決内容
(1) 本件第1項発明の「第1の化合物及び第2の化合物を含む有機光電子素子用材料」の解釈

請求項において、「第1の化合物及び第2の化合物を含む有機光電子素子用材料」と記載した場合、特許法院は、1)「第1の化合物と第2の化合物を含む材料」と明示しており、2) 発明の詳細な説明において、i)「第1及び第2の化合物の特定の組み合わせ」による発光層における優れた効果を記載した点、ii)「第1及び第2の化合物を同時に発光層に用いる場合」と記載した点、iii) 実施例において第1及び第2の化合物のダブルホストを用い、比較例において同化合物を単独ホストとして用いた点を考慮して、本記載の有機光電子素子用材料は、第1及び第2の化合物を「同時に(共に)」含むものと判断した。

(2) 先行発明1の一般式の定義に合致しない具体例が誤記であることが明らかである場合、誤記が明らかな開示内容を新規性及び進歩性判断の基礎とすることができるかどうか

先行発明1の具体例に表示された2つの化合物は他の化合物と異なり、一般式の定義に合致しない。特許法院は、具体例が誤記であることが明らかな場合に該当するから、そうした誤記が明らかな化合物を新規性及び進歩性判断の基礎とすることはできないと判断した。

(3) 先行発明2に具体的に開示されていない構成により先行発明2が教示するものと相反する効果を達成する場合、新規性及び進歩性を否定することができるかどうか

特許法院は、i) 先行発明2の実施例では、主に単一ホスト材料について開示しており、本件第1項発明の化学式A-1で表される化合物と化学式B-1で表される化合物を共に含むダブルホスト材料については具体的に開示していない点、ii) 先行発明は、ターフェニル基を含むビカルバゾール化合物が、フェニル基又はビフェニル基を含むビカルバゾール化合物よりも効果が優れると記載している点、しかし、iii) ダブルホスト材料において、本件第1項発明の化学式A-1で表される化合物と化学式B-1で表される化合物との組み合わせが、本件第1項発明の化学式A-1で表される化合物と先行発明2の一般式(1)で表される化合物との組み合わせよりも効果が優れる点,すなわち先行発明2の上記のような記載は相反する結果を表す点を挙げ、本件第1項発明は、先行発明2に基づき進歩性が否定されないと判断した。

3. 判決に対する考察
本判決は、(1) 請求の範囲に記載された発明の技術的思想を請求項に記載された用語の意味及び発明の詳細な説明に基づき明確に解釈した点、(2) 先行発明の開示内容が発明の概念(一般式の定義)に合致しないため誤記が明らかな開示内容を新規性及び進歩性判断の基礎としてはならないことを明確にした点、(3) 先行発明に具体的に開示されていない構成により先行発明が教示するものと相反する効果を達成する場合、そうしたことに基づき新規性及び進歩性を否定することができないことを確認した点で意味のある判決である。

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