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特許権の侵害判断において属地主義の原則の例外を認めた大法院判例

特許権の属地主義原則上、発明に関する特許権者が物に対して有する排他的な生産、使用、譲渡、貸与又は輸入等の特許実施に関する権利は、特許権が登録された国の領域内でのみその効力が及ぶことが原則である。

しかし、このような属地主義の原則の例外を認めた判例(大法院2019年10月17日宣告2019ダ222782判決)を以下に紹介したい。

1. 事実関係
対象特許発明と被告製品の構成を要約して対比すると次のとおりである。

対象特許発明の請求項1(独立項)の「医療用糸が挿入される経路を形成する中空の可撓性導管を備える管部材と管部材の導管内部に挿入されて管部材よりも大きい剛性を有する支持ロードを含む支持部材を備える挿入経路形成手段、及び挿入経路形成手段で支持部材が除去された後に、管部材の締結部に接続されて管部材を介して医療用糸を供給する医療用糸供給手段を備える」ことは、被告製品の「カテーテル、縫合糸、及びハブ」に対応する。

対象特許発明の請求項5(請求項1の従属項)の「挿入される医療用糸を中空の医療用糸供給管の内側に備える医療用糸保持部を備える医療用糸供給手段、及び医療用糸保持部は管部材の装着溝に締結される相補的な形状からなるコネクタを備える」ことは、被告製品の「縫合糸及びハブ」に対応する。

対象特許発明の請求項6(請求項5の従属項)の「医療用糸の端部には、医療用糸が生体の組織内に固定されるようにするための医療用糸支持体が形成されている」ことは、被告製品の「縫合糸及び縫合糸支持体」に対応する。

特許法院では、対象特許発明の挿入経路形成手段、医療用糸供給手段、及び医療用糸が被告製品のカテーテル、ハブ、及び縫合糸にそれぞれ対応するという点を認めながらも、対象特許発明の請求項1、5、及び6は、挿入経路形成手段と医療用糸供給手段に医療用糸や医療用糸支持体を追加するために、医療用糸供給手段の内側に医療用糸を配置したり、医療用糸供給手段の内側に医療用糸を配置する等、さらに加工したり組み立てたりする必要があるが、被告製品のカテーテル及びハブに縫合糸と縫合糸支持体を組み立てないままそれぞれ海外に輸出され、縫合糸がハブの内部に配置されたり、縫合糸に縫合糸支持体を形成するには、追加の加工を経なければならないので、被告がカテーテル及びハブに縫合糸と縫合糸支持体を追加して国内で生産したものは、対象特許発明の請求項1、5、及び6を侵害していないと判断している。

2. 大法院の判断
大法院は、「国内で特許発明の実施のための部品又は構成全部が生産されたり、ほとんどの生産段階を終えて主要構成をすべて備えた半製品が生産され、これが1つの主体に輸出され、最後段階の加工/組立が行われることが予定されており、そのような加工/組立が極めて僅かであったり、簡単で上記のような部品全体の生産又は半製品の生産だけでも特許発明の各構成要素が有機的に結合した一体として有する作用効果を具現することができる状態に達したのであれば、例外的に国内で特許発明の実施製品が生産されたようにみることが、特許権の実質的保護に符合する」として、属地主義の原則の例外に対する法理を説示しながら、被告の特許権侵害を認めている。
具体的には、(1)被告は、カテーテル、ハブ、縫合糸、及び縫合糸支持体の個別製品を国内で生産することにより、対象特許発明の実施のための構成全部を生産し、(2)上記個別製品は当初から日本所在病院に販売し、同一の皮膚リフティング施術過程でともに使用するようにする意図で生産されたものであり、(3)対象特許発明の明細書の記載によれば、医療用糸支持体を医療用糸の端部に結合/固定する方法は、通常の技術者が適宜選択することができる程度に過ぎず、(4)皮膚リフティング施術前又は施術過程で医療用糸の端部に医療用糸支持体を配置して固定させることは通常の技術者に自明であり、通常の技術者であれば格別の困難なく上記個別製品を各機能に合わせて組み立て、結合して使用することができるので、上記のような事情を考慮すれば、被告のカテーテル、ハブ、縫合糸、及び縫合糸支持体の個別製品を生産したことだけでも国内で対象特許発明の各構成要素が有機的に結合した一体として有する作用効果を具現することができる状態が備えられたもので、その侵害が認められるとみるのが妥当であると判断している。

3. コメント
本事案において、原審である特許法院は、部品全体が組み立てられて1つの個体となったとき特許発明の侵害可否を判断することができるとみて、部品全体の生産だけでは特許発明の侵害可否を判断することができないとしているが、大法院は、部品全体の生産又は半製品の生産だけでも特許発明の各構成要素が有機的に結合した一体として有する作用効果を具現することができる状態に達したのであれば、例外的に国内で特許発明の実施製品が生産されたようにみることができると判断し、属地主義の原則にもかかわらず国外で部品全体が組み立てられた被告の実施行為について特許権侵害を認めている。
従来は、ほとんどの特許発明が国内で実施されたとしても、特許発明の技術的思想を考慮するとき、些細な部分に該当する最終段階を国外で実施した場合には、国内で特許権による保護を受けることがほとんど困難であった。しかし、本大法院判決は、このような実質的な特許侵害行為から権利者を保護することができるということを判示した点で、その意義がある。




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